経験値稼ぎが楽しい良いゲーム
  それは同時に時間泥棒

突(略


まず言い訳をさせてください。




今を去ること10年ほど前になりますか。SRPGのくせに恋愛シミュレーションというか人間版ダビスタという画期的なシステムを投入したファイアーエムブレム、「聖戦の系譜」というゲームがありました。
ゲーマーの各々方には説明不要でありましょうがざっと概説しておくと、これがまた神の血を引く聖戦士の末裔同士の領土争いだの、その聖戦士だけが使える伝説の12武器(ゲイボルグとかグングニルとかミストルティンとかトールハンマーとか)だの、後編で登場するキャラクターが前編でのキャラクターの恋愛から生まれて、前述のシステムで能力を受け継いだ子供たちだのという、当時まさにリアル中学生、厨二設定が大好きなボンクラな私が喜び勇んで食いつくような設定の数々だったわけです。
ところが哀しいことに当時のゲーム媒体はスーパーファミコン。学校帰りに何十時間とかけてコツコツ進めた大河ドラマシミュレーションの結晶データは、アダプタの接触不良という神の悪戯によって最終ステージ開始直後にゼロリセットを食らわされたのでありました。
一からやり直す気力などあるわけもありませんでした。




そんなわけで悲しい別れ方をしたファイアーエムブレムだったわけですが、その世界観とシステムとキャラクター達については異常とも言えるほどの惚れこみようをしていたままだったのであります。中でもお気に入りだったのが後半戦で登場するトラキア地方の亡国の王子、リーフというキャラクター。最初はやたらと弱っちいにも関わらずクラスチェンジするとあらゆる武器のエキスパートになる、というまたも厨二設定な部分がツボに入って大事に育てていたのも良い思い出となってしまってから数年後、ファイアーエムブレムの新作が発売されました。
その名は「トラキア776」。
聖戦の系譜の外伝。ファン内部で今なお歴代最高難度を誇るとすら評判の、リーフが主役の物語でした。




そこで即座に買えば良かったのですがそこはリアル中学生、当時からヲタクな趣味に手を出していた私にはそうそう金策に当てがあるわけも無く、懐に余裕が出来るまでは廉価な攻略本を購入して設定を読むことで我慢をするしか無かったのです。余談ですがこの性癖は現在に至っても続いています。
しかしまたここで神の悪戯が。
記憶に残っている方もいるかもしれませんが、このトラキア776の登場媒体はスーファミスーファミでも「ニンテンドウパワー」。
そう、アレです、20世紀末期に蘇った昭和の遺物ロッピーサービス、端的に言うとスーファミディスクシステムでのみの配布、または中学生に手の出せるわけも無い豪華限定版仕様の通常ロムという発売だったわけです。
はい、オチは読めたかと思います。




余裕が出来た頃にはロッピーサービスなど終わりを告げておりました。




斯様な顛末のために中古屋を巡ろうとトラキア776は見かけられることも無く、21世紀になってヤフーオークションなどがメジャーになってから検索をかけてみたとしてもお値段五桁は当たり前、一縷の期待をかけたバーチャルコンソールも何故かスーファミファイアーエムブレムでこれだけ配信予定もないみたい、という状況だったために、最早私は一生このゲームをプレイすることは叶わないかもしれないなあ、と半分諦めかけつつそれでもTRPG用のネタとして使うかもしれないので実家からこの間持ってきた10年物の攻略本を寝る前にパラパラめくる生活を送っていたのです。
一週間くらい前まで。








で、えーと詳細は省きますが格安で入手したわけですよトラキア776ええもう格安でトラキア776を入手したのですよ。
テスト期間中だったのに。
そりゃもうちょっと進めただけで気がつけば6時間が吹っ飛んでいて朝型生活が瞬時に夜型生活に矯正されて夢の中でもユニット編成するようになってしまってはとりあえず全部クリアしないと何も出来ないではないですか。意識がゲーム世界から現実世界に戻ってくる合間を縫うようにして試験勉強してましたよ実際。
でもいいんです、どうせ時間が有ったってろくに勉強しなかったから、良い感じに「うわー時間が無いから一生懸命勉強しなくちゃー!」というプレッシャーを与えてもらったと考えることにします。




さてさて、ペガサスナイトも真っ青なスピードでクリアしてしまうほどこのゲームの何が面白かったかってリーフ軍のゲリラ戦法。敵を手加減攻撃で捕獲して身包みを剥がし、シーフの「ぬすむ」で武器をスリ取り、敵が持っていた武装の一切合切を奪い取ってそれを使って戦う、というシステムが楽しくて仕方なし。盗むのにも一定の条件は必要なのですが、経験値稼ぎでそこらへんをクリアしてしまえば後はもうやりたい放題。
FEの伝統通り序盤は山賊退治から始まるのですがどっちかっていうと後半はリーフ軍の方が山賊です。
ピンチに駆けつけた敵の増援をオヤジ狩りの刑に処して軍資金を調達とか、武器を盗まれたので泣きながら武器屋に駆け込んで武器を現地調達した兵士が懐にしまう前にさらに武器を盗んで無限ループで武器を買わせるとか、城門に居座って拠点防衛しているボスをよってたかって武器を取り上げてダルマにしてから壊れた武器で死なない程度に叩きまくって経験値稼ぎとか、冷静に考えてみるとまさに外道な事をしている主人公達。
そしてそんなことをしていたせいで一週間も経っていた私。
自重し……たいけど出来そうもありませぬ。


何故なら格安で聖戦の系譜も再入手しちゃったから。
あと、これも長年探し続けてたスパロボOGの原点とも言うべきスーパーロボット大戦外伝・魔装機神も(長くなるので略)