連射王〈上〉

連射王〈上〉

連射王〈下〉

連射王〈下〉

デトロイトが「体育会系がどうやってエロゲにはまるか」を書いたものだったとしたら、これは「体育会系がどうやってSTGにはまるか」を書いたものだった。
小説と言うよりもSTG初心者向けのコツを掴む楽しさ講座というか。やってることは延々シューティングシューティングシューティング時々技の解説。まんがサイエンスか。
実際「東方シリーズとか興味はあるけど難しそうだから手を出しにくいなあ」と思う私からすると感情移入バリバリ。図らずも後書きで書かれていたようにシューティングに手を出してみたくなったほど。
その一方で「自分が本気になれるもの」を探して足掻きつつ人間関係に苦悩する主人公の青春模様がある。
やはり、全てを懸けて悔いが無いほどに夢中になれるものがあるということは、素晴らしい。
そして、そうしたものを持っていられる自分とそうした対象が存在することが、この上も無くありがたい。


アルファシステム絢爛舞踏やエースじゃないけれど、「たかが遊びに本気になること」の素晴らしさと歪みを兼ね備えた思いを赤裸々に書き切った文章は、終盤に行くに従って刻々と執念を凝縮させていく。
そうしたストイックな姿勢からくるものか、川上稔にしてはある種違和感を感じるほどに淡々とした文体。脳のネジが吹き飛んだ荒唐無稽な馬鹿ネタやフルスロットルで駆け抜ける掛け合いが微塵も存在しない。しかもフラグ全部揃ってるのにサービスシーンが発生しないときはもうどうしたものかと。ラストも軽く欲求不満だ。
その代わりと言っては何だが、シューターのボタン連打の音すらも聞こえてきそうなほどに描写された大連射のプレイ風景は、読むほどにこちらの動悸を速め鳥肌を立たせてくれた。


時代は嘔吐か。


http://www.mediaworks.co.jp/~w_kawaka/living/sinbun/ren/ren01.htm
なんと、ウェブ上には冒頭が連載されていたらしく。絵があったのか。予想よりどっちも大人っぽいな。


DDD 1 (講談社BOX)

DDD 1 (講談社BOX)

挿絵が軒並み削られてるッッ(悲鳴)!?せめて再録くらいしてくれてもバチは当たらないだろうに!ツラヌイのイラストが一枚も無くなってるじゃないか!
ファウストを捨てようかと思っていたが完全に断念。結構場所とるから難儀してるのにぃ。
はい、入手しましたよ奈須きのこ氏の放つ叙述トリックの宝庫。書き下ろしは妹×トマトさんの人外バトル。
……あ、ごめん、イラストオミットのあまりのショックに感想が上手く出てこないんだわ……
ともかくも氏が書く「新伝綺」の主軸たる「非日常を凌駕する日常」(こういう趣旨で合ってたっけ?)を十二分に体現し、悪魔憑きは見事に人間に敵いません。最終的に一番恐ろしいのは、やっぱり見境無く増える人間なんだなあ。


当時から言いたかったことなんだが、コンニャク喰ってろピザというツッコミはダメでしょうか。あれだけどうしても納得がいかないんだ。


後は刀語とらドラ!か。ハードカバーって洒落にならん価格だよね。年末年始は買った本だけで軽く万に届きそうだぞ。